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アルトゥール・アブラハム……復活?

ミドル級において破格の強打者として鳴らすも、階級を上げて挑んだスーパー6トーナメントで三敗。キャリアの岐路に立たされた“アーサー王”が2戦の地域タイトル戦を経てWBO王座に挑んだ。相手はスーパー6の影で地味~にこのタイトルを6度も防衛中の同国人(といっても二人共外国生まれの移民だが)ロバート・スティーグリッツ。同じようにマイペースで防衛を続けていたブテと比べても格段に地味な日陰の王者である。

強豪相手に挫折を味わったアブラハムか? 自分のペースを守り続けてきたスティーグリッツか? 下馬評はややアブラハム優位の中、ベルリンの超満員大観衆の前でジャーマンダービーが始まった。

試合は立ち上がりから両者のスタイルの違いが鮮明に出た。いつも通りがっちりガードを固めて強打を振るう挑戦者。ビジーに手を出しペースを握ろうとする王者。初回のポイントは微妙ながらもパワー、フィジカルのあまりの差を見て勝負は短いかと思われた。しかしやはりスティーグリッツも伊達に世界タイトルを持ってはいない。飛ばし過ぎに見えたペースが落ちないのだ。時折挑戦者の強打で頭を揺らされるも、意地でも手数を止めようとはしないスティーグリッツが序盤をやや優勢っぽく乗り切る。

だがスティーグリッツのパンチ力はやはり充分とはいえない。ことSミドル級の世界王者として評価するならはっきり弱打者と言っていい。時折アブラハムのガードを割って顔面を捉えるもこれといったダメージはなし。逆にアブラハムはワイルドな右一発で王者の足を鈍らせてしまう。中盤以降この流れがいっそう顕著になり、ラウンド前半スティーグリッツがよく動くも後半ビッグパンチを貰って明白にポイントを奪われる展開が続く。

このままKO奪取もあるかと思われたアブラハムだが終盤には自分も疲れ、やや反撃を許して試合終了のゴングを迎えた。試合全体を通して挑戦者の手数は非常に少なかった。与えたダメージでは勝っていてもジャッジの印象次第ではドローもあるかと思われたが、公式スコアは三者一致(2ポイント差1人、4ポイント差2人)で新王者誕生を告げた。二階級制覇である。

 

勝ったアルトゥール・アブラハム、よくも悪くも今まで通り。手数が少ない、攻防分離。でもパンチが凄い。圧力が強い。この先も普通の世界ランカークラスなら一蹴するだろうが真のエリートクラスと戦えば非常に苦しい試合が待っているだろう。今回はスタミナの低下疑惑も見られた。

今後はどうするのか。本人はフェリックス・シュトゥルムに上がってきて欲しいらしい。実現すればドイツでは熱狂的な歓迎を受けるだろう。ウォードやフロッチとの再戦はとても勝ち目がないので陣営が許さないだろう。どちらかというと頂点を決める戦いと言うよりも、かつてのエディソン・ミランダ戦のような火花バチバチの強打者対決をまた繰り広げてほしいなあ。

 

ともかくアーサー王はまだまだ健在だった。