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コットの無念、世代交代の季節

ニューヨーク、マディソン・スクエア・ガーデンで行われたWBAスーパーウェルター級タイトルマッチは、王者オースティン・トラウトが挑戦者ミゲール・コットを大差の判定で下した。試合全体の印象に比べて採点はいささか開きすぎていたとはいえ、序盤の出遅れに終盤の失速を伴ったコットの敗北に異論の余地はない。判定が下った直後、インタビューにもほとんど応じず足早に去って行ったコットの表情からは無念が溢れていた。

敗因は一つではない。体格差は明白だったし、トラウトのやりにくさ、ずる賢さはコット陣営の想像以上だったろう。しかしそれ以上に歴戦の雄コットに衰えがあったことは間違いない。相手のパンチに対する反応、耐久力、背中まで貫通すると恐れられたボディブローの効果、下半身の安定とバランス、そして何よりスタミナにははっきりとした衰えが見られた。トラウトの決して強くないパンチで顔面が腫れ上がってしまったように、昔から弱点とされてきた皮膚の弱さもますます顕著だった。

つまるところこのプエルトリコのスーパースターにもキャリアの晩秋が訪れたということだ。今後彼がグローブを吊るすのか戦い続けるのかはわからないが、もはや世界の真のトップ戦線に戻ることはないだろう。

 

今年はコットだけでなく、多くの偉大なファイターに世代交代の波が襲った年だった。モズリー、マルガリート、ウィンキーライトが数日の間に一気に引退し、モラレスがあと一戦でのリタイアを公言した。日本の誇り西岡利晃は全てを賭けたドネア戦に敗れ決断を下した。ポンサクレックが、カルデロンが、モレルが限界を悟った。ハットンは三年ぶりの復帰戦に敗れ二度目の引退を発表した。細かいところではキンタナやコテルニクもリングを去った。ビタリは敗れていないが、引退するかどうかのライン上にいる。

引退した選手達だけではない。現役最高のスーパースターパッキャオが七年ぶりに敗戦を喫した。スピンクスがいいところなくKOされた。さしものホプキンスすらも限界を感じさせた。モンティエルはもう辛そうだ。ラクマンやベイリーやマルケス弟も強く引退を勧められるまでになった。マラビジャことマルチネスもチャベス戦で満身創痍の負傷を負い、次の試合で今までのようなパフォーマンスを維持できる保証はどこにもない。グスマンの無敗ロードは昨日終わった。

 

どんな時代も必ず終わる。どんな名選手も最後は老いに敗れる。好きなファイターの黄昏を見ることはいつだって悲しい。ファンに出来ることは感謝することと記憶や記録を残すことぐらいだ。

そしてまた新しい時代がやってくる。