ZEEBOX

ボクオタによるボクオタのためのブログです

五輪ボクシング総まとめPART3(選手編・後半)

前半の続きです

 

ウェルター級

セリク・サピエフカザフスタン):世界選手権で金2、銀1、銅1。そして五輪金メダル。まさにアマの頂点を極めたと言える28才。今大会ではMVPに該当するヴァル・バーカー・トロフィー(Wikipedia)を獲得し大会の顔となった。日本代表の鈴木を二回戦で圧倒している。サウスポースタイルから叩きつけられる重く固い左はどんな一流ボクサーにとっても脅威だろう。カザフボクシングの象徴とも言える存在だ。

 

ミドル級

村田諒太(日本):やはりこの男は外せない。日本人がミドル級で五輪金を獲る。頬をつねりたくなってしまうほどの偉業を成し遂げた怪物だ。昨年銀、今年金という成績はフロックではありえない。アマらしからぬ重いボディーブローを主武器にしたインファイトによってあらゆる強豪を後半ヘロヘロにしてみせた(決勝だけは自分が疲れてしまったが)。プロ転向はなさそうだがいちファンとしてはやはり見てみたい。想像してごらん、村田vsマラビジャ、チャベジュニ、ゴロフキン、ピログ……。

 

エスキーバ・ファルカオ(ブラジル):村田を大いに苦しめ金メダルまであと一歩に迫った22才。去年の世界選手権では村田のパワーの前に完敗を喫したが、一年を経てあらゆる能力を向上させ目を見張る力を身につけた。スピード、カウンターテク、パンチの多彩さでは本大会ミドル級ナンバーワンと言えるだろう。プロとしても大変な可能性を秘めているが、ブラジルの協会としては何が何でもリオ五輪までとっておきたい手駒だ。実の兄もライトヘビーで銅を獲り兄弟同時メダリストとなった。

 

テレル・ガウシャ(アメリカ):最悪の成績となった米国男子の中ではかなり優れたパフォーマンスを見せた。一回戦、五輪では滅多に見られない完全ノックアウトで鮮烈に存在をアピール。二回戦ではシン(インド)に1ポイント差で敗れたが、判定がおかしかったとする声はかなり強い。そのシンも次でアトエフに敗れたがこれまた非常に怪しい判定であった。三段論法ではアトエフより強いかもと思わせる。この男とぶつからなかったのは村田にとって幸運だったのかもしれない。プロでの活躍を見守りたい。

 

アンソニー・オゴゴ(イギリス):ナイジェリア人の父を持ち、モデルとしても活動するイギリスの若きスター候補。二回戦、優勝候補のキトロフ(ウクライナ)戦で一世一代の熱すぎるファイトを繰り広げ大番狂わせを実現。判定には異論もあったが試合の面白さでは今大会屈指だった。まだまだ技術的に未熟なれど魂のこもったインファイトは魅力たっぷりだ。

 

ライトヘビー級

イゴールメコンチェフ(ロシア):絶対に殴られたくない丸太のような腕を持つ今大会屈指の豪腕パンチャー。アマボクでこんなのありかと言いたくなる痛々しいパンチを放つ。このような選手が金メダルをとってしまうロシアンボクシングのレベルの高さには戦慄を禁じ得ない。

 

ダミアン・フーパー(オーストラリア):ユース五輪で金を獲得した豪州随一のホープ。ロンドンではメコンチェフに屈したがまだ20才。その力強いボクシングには大きな可能性が溢れている。なお彼の今大会でのとある行動が穏やかならぬ議論を呼ぶことになった。五輪の精神にも関わるその件に関してはまた改めて記事を書く予定。

 

ヘビー級

オレクサンドル・ウシクウクライナ):アレクサンドルではない。オレクサンドルである。サウスポーの長身から撃ち落される左が主武器のクリチコっぽいボクサー。しかしあの兄弟に比べると流石に色々と物足りないか。変な判定が乱発されたこともあって今大会のヘビー級は低調だった。

 

スーパーヘビー級

アンソニー・ジョシュア(イギリス):英国にあのオードリー・ハリソン以来となる(と書くと不吉だが)最重量級金メダルをもたらした22歳の若武者だ。198センチの長身から機敏で力強いパンチを打ち込むスタイルは魅力たっぷり。特に左ジャブの威力は「ジャブではなくストレートォ!」という陳腐な台詞をそのまま使いたくなってしまう。ボクシング歴はわずか4年。次世代の英国、欧州、ひいては世界のヘビーを引っ張っていく、そんな夢を見たくなる。しかし今のところすぐにプロ転向するつもりはないらしい……?

 

エリスランディ・サボン(キューバ):今大会の裏番長。一回戦でジョシュアに敗れたがこれは地元判定だともっぱらの評判だ。その後ジョシュアがサボン戦以上の苦戦を経験しなかったことを考えると、実はこの男こそが現役最強のスーパーヘビーなのかもしれない。それもそのはず、なんとあの伝説の男フェリックス・サボン(五輪三連覇、世界選手権六連覇。誤字ではない)の甥っ子なのだ。亡命しなければリオでの金メダルは決まったも同然ではなかろうか。でも亡命して欲しい……。

 

イヴァン・ディチコカザフスタン):デカァァァァァァァァイ!!説明不要!! 205センチの体躯を誇るカザフの大巨人。このサイズで決して鈍くないまともなフットワークとコンビネーションを操るさまは悪い夢を見ているかのようだ。ジョシュアとは接戦だったが最終回で鼻を潰され明白に敗れた。英語圏のフォーラムではロッキー4のあいつの名前で呼ばれていた。

 

女子

ケイティ・テイラー(アイルランド):ライト級金。開会式でアイルランド代表の旗手を務めた国民的スーパースター。決勝戦では屋外パブリックビューに無数の群衆が押し寄せ、全てのパブが満員になりテレビも記録的視聴率を残したという。ボクサーとしては丁寧で基本に忠実なスタイル。

 

クラレッサ・シールズ(アメリカ):ミドル級。アメリカ唯一の金をもぎ取った17才(!)。女子の域を超えた、恐ろしく速く痛いパンチを放つ。しかも積極性も飛び抜けていて観客を決して退屈させないナチュラルボーンファイターだ。今後女子ボクシングの未来を担っていくことは間違いないと言えよう。