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ロサド、コヴァレフ、ロメロ……駆け上がる者達

ビッグウィークだった先週末とは違い今週は目玉ファイトは不在。その中でもピリリと辛い好パフォーマンスを見せた若者たちがいた。100%世界を獲るスター候補とまではいかずとも、こうした活きの良い若手が増えることはこのビジネスにおいて最も楽しみなことの一つだ。

 

ガブリエル・ロサドvsチャールズ・ウィテカー

26歳のロサドは20勝5敗12KO。38歳のウィテカーは38勝12敗2分23KO。テレビファイトのメインイベントで二人合わせて17敗というのは稀なケースだ。しかしだからといってこの試合のレベルが低いわけではない。ロサドはここまで6連勝4KO中で、セクー・パウウェルやヘスス・ソトカラスといった難敵を倒して急速に評価を上げてきた叩き上げの新鋭。ウィテカーにいたっては8年間無敗で14連勝の果てにこの舞台に上がってきた大ベテランなのだ。勝てばIBFスーパーウェルター級指名挑戦権が手に入るというこの重要な一戦を制したのは地元ペンシルバニアの若武者の方だった。

ロサドは動きが機敏でダイナミック、それでいて積極的に攻める上に力強い。テレビが喜ぶ典型的なスタイルの持ち主だ。長い腕を生かしたロングパンチで攻めたいウィテカーをグイグイロープに詰め連打を叩きつけていく。ウィテカーの良い場面も時々見られたが、攻撃のボリュームに大きな差があった。ハイライトは第五ラウンド、ロサドの右でウィテカーが吹っ飛んでダウン。立ち上がったベテランを仕留めるべくパンチをまとめようとしたロサドだが起死回生の左フックを喰らい逆によろめく……という見応えたっぷりの攻防が展開された。

後半に入ると両者の体力、勢いの違いがますますあらわになっていく。執念で抵抗し続けた老兵だが、10ラウンドに力尽きたように崩れ落ちストップが宣告された。ロサドにとっては難敵相手に会心の勝利であり、これで噂されるK9・バンドレイジvsアンドレ・ベルト戦の勝者への挑戦権を得た。世界獲りなるかどうかはわからないが、ロサドの機敏かつ攻撃的なスタイルは必ず観客を楽しませてくれるはずだ。あるいはIBFではなくカネロ・アルバレスに挑んでもスリリングな攻防が期待できるだろう。ちなみに一番の穴王者WBOのベイサングロフかと思われる。

いずれにせよどんどん強くなるロサドの今後には要注目だ。

 

セルゲイ・コヴァレフvsライオネル・トンプソン

元々はコヴァレフvs元王者ガブリエル・カンピーリョだったこのカード、カンピーリョの負傷欠場で急遽トンプソンが代打出場することとなった。トンプソンは割と戦績の良い選手であり、代役としてはまあまあ良い相手と言えるだろう。一方のコヴァロフは18勝16KOを誇るロシアのハードヒッター。一体どんな力を見せてくれるのか。

まず驚いたのはコヴァレフのデカさ。本当に同じ階級なのか? 身長も厚みも明らかに違うぞ。試合が始まると、実力面でも体格と同じぐらいの差があることが即座に明らかに。トンプソン、押されまくりの打たれまくり。2ラウンド後半に凄い右が撃ち落され豪快にダウン。ラウンド終了直前にもう一度ダウン。3ラウンド、開始早々襲いかかったコヴァレフがあっさり三度目のダウンを奪いストップを呼び込んだ。

とにかく力の差が凄まじかったので未知な面もたくさんあるが、この強打は間違いなく「買い」である。カンピーリョとの対戦が再び組まれれば、コヴァレフの恐ろしさが知れ渡ったぶん更に楽しみなカードになると言えるだろう。

 

ジョナサン・ロメロvsエフライン・エスキヴィアス

IBFスーパーバンタム級2位決定戦と銘打たれたこの試合。北京五輪にも出場したコロンビアの全勝ホープロメロは二度目のSHOTIME登場。エスキヴィアスは元王者リコ・ラモスに善戦の末破れてからの再起戦だ。

試合が始まってすぐロメロの豊かな才能が目を楽しませる。スラリと長い手足にバネのある動き、スピード感溢れる多彩なコンビネーション、カウンターとディフェンスの確かな技術。そして長いリーチを持ちながら接近戦でもシャープなパンチを打ち込めるという点でも凡百のボクサーとは明らかに違う。序盤からロメロが大量のクリーンヒットを奪い、決着は早そうだと思われた。

しかしエスキヴィアスの本領はここからだった。とにかくタフなのだ。そして前進が止まらない。打たれても打たれても前に出続けパンチを振るう。また打たれる。そしてまた前進……。棒立ちで次々にビッグショットをもらい、いくらなんでももう限界では……と思わせたところからまた反撃。とうとう12ラウンドを闘い抜いてしまった。ほとんどゾンビみたいな男である。判定は見るまでもなくロメロがほぼフルマークで大勝。しかしエスキヴィアスにはまたきっと出番があるはずだ。

ロメロはコロンビアにありがちなパンチ力だけの荒いファイターではない。高度に洗練されたテクニカルなファイターだ。リーチを活かしたロングレンジでポイントを奪うだけでなく、接近戦でも見応えのある攻防を展開することができる。異常なタフネスを見せたエスキヴィアスに最後まで力のこもったコンビネーションを打ち込み続けたスタミナと闘争心も買いである。

現在のIBF王者はあのノニト・ドネア。さすがに次ドネアというのはキツイし、そもそも試合の実現自体難しいだろうが、もう少しキャリアを積めば、そして今回試されていないアゴの強さが充分ならばこの階級のトップクラスに君臨できうるだけの可能性はある。恐らくドネア西岡リゴンドーといった現トップに挑むのではなく、彼らが引退なり階級アップなりした跡を継ぐような形になるだろうが。