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S.O.G.ウォードは最強なのか?

S.O.G.である。Son Of Godである。日本の格闘家にそういうニックネームの選手がいたが、宗教ごちゃ混ぜの日本ではなくキリスト教ががっちり主導権を握っているアメリカでこの名を名乗ることは並大抵のことではない。これで弱けりゃ石を投げられる。

しかしウォードは強い。巧い。隙がない。そして地味。顔が地味、試合が地味、存在感が地味……。大衆の目を退く派手なノックアウトなどこの男には無縁だった。

このドーソン戦もおそらくは技術戦のまま最終回のゴングを迎えるだろうと誰もが思っていたはずだ。だが蓋を開ければそこには今までとは一味違うS.O.Gがいた。3R終盤に撃ち抜かれた閃光のような左フック一閃、ライトヘビー級王者が地面に落下する。続く4Rでも左一発でダウンを奪うとあとはもう一方的。延々と対戦者を痛めつけた末に10RTKOでこの悲惨なワンサイドゲームを終わらせた。

 

とにかくこの日のウォードは強かった。いつも通りの、クリンチを効果的に取り込んだ嫌らしいほど巧みな密着戦、相手の手を封じてしまう万能のカウンターセンス、右ボディストから一瞬でつながる切れ味鋭い左フック。ライトヘビー級でナンバーワンの評価を得るバッド・チャドを完全に支配してしまった。最後のドーソンは肉体的にはまだ続けられたがすっかり戦意を失ったような形だ。褒められた負け方ではないがこの展開ではそれもやむを得ない。あまりにも付け入る隙がなかった。

これでウォードはこの三年間でケスラー、グリーン、ビカ、アブラハム、フロッチ、ドーソンに完勝しほとんどまともなダメージすら受けていない。この豪華なレジュメはもはやPFP候補に挙げられて当然と言えるほどだ。パッキャオもメイウェザーも直近の数戦ではここまで完璧な試合を繰り広げていないし、セルヒオは対戦相手のレベルに不満が残る。となるとSOGが一位……? ううむ、まだ早いような。でもだとすると誰が一位なんだ?

 

それはさておきウォードが抱える最大の問題は次戦うべき相手がいないということだ。対抗王者はフロッチとアブラハム。とっくに料理済みである。興行的に大きいのはブテだが今日の試合の後ではとても楽しみにはなれない。あとはディレル兄弟にオースイゼン、ステベンソン、グローブス、ディゲール……。うーん、悪いラインナップではないがちと無理がある。

周辺階級に目を移すとマルチネスは決してSミドルには来ないしゴロフキンも小さすぎる。サイズ的にはチャベスが釣り合うが見たいか、これ? となるとあとはLヘビーに上がるしかない。パスカル、クラウド、カンピーリョ、クレバリー……。まあ悪くはないが、誰とやっても予想はウォードに大きく傾くだろう。次のスターが上がってくるまでしばらくはかつてのロイのような一人相撲が続きそうな情勢だ。

もしかしたら今のウォードに最も求められているのは最強を争うメガファイトではなく、鮮やかなKOを続けて大衆にアピールすることなのかもしれない。